プロの屋根塗装工程
まず、屋根の塗装は「下準備」が何より重要です。これを怠ると、どれだけ高価な塗料を使用しても数年で剥がれたり、耐久性が著しく落ちるリスクがあります。
以下の表は、プロが行う一般的な塗装工程と目的を示しています。
工程 |
内容 |
目的/役割 |
点検・調査 |
劣化状態、屋根材の種類、劣化進行度を確認 |
最適な塗装方法・塗料選定に必要な基礎調査 |
足場設置 |
安全かつ正確な作業を行うための足場設置 |
作業員の安全確保と高所作業の効率化 |
高圧洗浄 |
旧塗膜、コケ、カビ、ホコリを除去 |
塗膜の密着性向上、仕上がりの美観向上 |
下地補修 |
クラック・サビ・釘の浮き等を補修 |
劣化進行の防止、塗料が最大限に効果を発揮する下地作り |
養生 |
塗装しない箇所を保護 |
外壁やガラス、植栽などへの塗料飛散を防止 |
下塗り |
下地と塗膜の密着性を高める塗料を塗布 |
塗料の吸収を抑え、密着性を向上 |
中塗り |
メインの塗膜形成 |
塗料の性能を発揮するための厚みを確保 |
上塗り |
最終仕上げ、色艶や防水性・耐久性を向上 |
見た目と機能性の最終調整 |
縁切り処理 |
スレート屋根に塗料が詰まった箇所の処理 |
雨水の排出通路を確保し、雨漏りを防ぐ |
完了検査 |
施工後の仕上がり・塗り残し・不具合確認 |
品質保証の最終工程 |
足場解体・清掃 |
足場撤去後の現場清掃 |
美観を保ちつつ、お客様引き渡し前の仕上げ |
これらの工程はすべて、ただの作業ではなく、屋根の耐久性や雨漏り防止、遮熱効果など多くの機能に関わる重要なプロセスです。たとえば、「縁切り処理」が適切に行われていないと、スレート屋根では雨水が排出できず、内部に湿気がこもり、やがて腐食や雨漏りを招く可能性があります。
DIYで屋根を塗るリスクと注意点!命綱の必要性や法的制限
屋根の塗装を自分で行う「DIY塗装」は費用を抑えられるメリットがありますが、安全面や仕上がり、法律上の問題など多くのリスクを伴います。特に高所作業では命に関わる重大な事故が発生する可能性があるため、慎重な判断が必要です。
まず、DIY塗装で最も問題になるのが「安全性」です。日本では、労働安全衛生法により、高所作業(2メートル以上)には命綱や足場などの墜落防止措置が必要とされています。たとえ個人の住まいであっても、高所作業に該当する場合は同様の対策が求められるのです。
DIYで塗装する際に必要な安全対策の例
- 安全帯(命綱)の装着と固定
- 足場の設置または安全な昇降手段の確保
- 転落防止用ネットやガードレールの設置
- 強風時・雨天時の作業回避
さらに、実際に報告されているDIY中の転落事故は少なくありません。消費者庁の調査によれば、脚立からの転落や屋根上での滑落による骨折、頭部外傷などの事例が複数報告されています。自宅でのDIYが結果として高額な医療費や後遺症を招くリスクもあるため、安易な実施は推奨できません。
また、仕上がりの品質という点でも課題があります。以下はDIYとプロ業者による塗装の違いを比較したものです。
項目 |
DIY |
プロ業者 |
安全性 |
不十分、命綱未使用例あり |
安全基準に基づいた足場・命綱使用 |
下地処理の精度 |
洗浄不足や補修漏れが多い |
高圧洗浄・補修作業を徹底 |
使用塗料の品質 |
ホームセンター品など市販レベル |
高耐久・高機能の業務用塗料 |
塗装技術 |
ムラや厚み不足の可能性 |
均一で丁寧な三度塗りが標準 |
仕上がりの美観 |
色ムラ・垂れが起きやすい |
プロによる均一かつ高品質な仕上がり |
保証の有無 |
無保証 |
保証書付き施工が一般的 |
見た目以上に大きな違いがあるのが「下地処理」と「安全対策」です。これらを怠ると、たとえ仕上がったとしても、すぐに剥がれたり雨漏りが発生する危険性があります。
費用だけで判断せず、必要な道具や安全対策、作業時間、リスクを総合的に比較し、安易にDIYを選ばないことが重要です。
外注業者に依頼するメリットと業者選びのコツ
屋根塗装を外注業者に依頼する最大のメリットは「安全性・品質・保証」の3点です。加えて、スケジュール管理や専門的な提案、法令遵守など、個人では対応しきれない領域をカバーできる点も見逃せません。
業者選びで最も重視すべきポイントを以下の表に整理しました。
チェック項目 |
確認内容と意義 |
資格・認可 |
建設業許可、塗装技能士など国家資格の有無 |
保証の有無 |
塗膜保証・施工保証・雨漏り保証の有無 |
施工実績 |
自社施工の件数、施工写真やお客様の声の掲載があるか |
提案力 |
現地調査に基づく適切な塗料・工法の提案ができるか |
使用塗料の説明 |
グレードや特徴、耐用年数・価格差を明確に説明してくれるか |
工期と管理体制 |
工期の目安、天候対応、担当者の明確化など |
アフターサポート |
定期点検やメンテナンス案内、トラブル時の対応体制 |
これらの基準を満たす業者を選ぶことで、「施工の質」だけでなく、「施工後の安心感」にもつながります。たとえば、単に価格が安いだけの業者を選んでしまうと、工事後に塗膜が剥がれても補償が効かないケースや、そもそも連絡が取れなくなるというトラブルも発生しています。